パリ3日目の朝。この日はアミアンに電車で戻り、そこからモンサンミッシェルまで4時間弱移動の予定です。朝の特急に間に合うよう、頑張って早起きして、とりあえず電車に乗る前に何かお腹に入れておきたい、と、ダイニングまで行ったらば・・・なんと、ホテルの朝ごはんのパンが、まだ到着していないとのお知らせ。近所のパン屋さんから、焼き立てを届けてもらうらしいのですが、今日は遅れているとのこと。30分弱しか朝食時間がなかったので、やきもきしながら待っていたら、10分後に届いたので一安心。大急ぎで腹ごしらえし、メトロを乗り継いでパリの北駅へ。なんとかアミアン行きの電車に間に合いました。それにしても、すきっ腹でもいいからとにかく駅へ行こう、という選択肢がないのは、食いしん坊ぞろいの我が家ならではです・・・。
で、パリに行くときはあっという間だったこの電車。残念ながら45分の遅延に見舞われ、子供たちの「トイレ行きたい!」コールに冷や冷やしながらも、なんとかアミアンにつきました。アミアンでは、とりあえずカフェに入って用を足し(汗 間に合ってよかった・・・)、併設のパン屋さんで道中に食べるサンドイッチを買ってから、駐車場で車を拾って、いざモンサンミッシェルへ!
アミアンまで来たときは、ベルギーやフランス北部の都市を次々に通り抜けてきたのですが、ここからは田舎へ向かいます。混んでいないし、走りやすい高速道路ばかりだったので、予定していた時刻より早めに、滞在する民泊のあるAvranchesという町につきました。
Avranchesは、ノルマンディー地方の町で、モンサンミッシェルから車で20分ほどの場所にあります。町の中心は小高い丘の上にあって、丘の裾野から海にむかって、住宅地や農地が広がっています。
予約していたのは、
Airbnbで見つけた素敵なお家。閑静な住宅地(高級住宅地!)の端、林に面した立地です。オーナーの方の自宅に隣接するかたちで立っているのですが、庭や入口がちょうど母屋の反対にあるのと、隣り合っている部分はほんの少しのために、滞在中ほとんど(というか、まったく)となりの音が聞こえないし、オーナー夫妻もほとんど見かけませんでした。
オーナーの方は、60歳くらいの優しい女性の方で、「かたことしか話せないんだけど・・・」と言いながら、英語で迎えてくれました。台所には、「明日の朝ごはんに」と、大きなブリオッシュと、特産品というシードルやPommeauというリキュールまで用意されていました。家の中の説明はもちろんのこと、モンサンミッシェルへの行き方や、一番空いている時間帯、近くの観光名所まで丁寧に教えてくれました。そして、「車で行くのが一番簡単ではあるけど、やっぱりおすすめは、湾を横切って、干潟を歩いていくことよ。もしよかったら、ガイドを紹介してあげる。」とのこと。歩く距離は7キロもあるということで、とうまが大丈夫かなと一瞬心配になりましたが、せっかくだからと予約をお願いしました。すぐに手配をしてくれた上に、「よかったらリュックサックも貸してあげようか」などと、いろいろと気配りしてくれて、至れり尽くせりでした。
この日は、急いでスーパーで買い物をして、民泊でご飯を作って早めに就寝。翌日のトレッキングに備えます!
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翌日。前日の曇り空がウソのようなお天気。トレッキングはお昼からだったので、サンドイッチや飲み物、おやつを用意していざ出発。しかも、なんとオーナーさんが「歩いた後に足が拭けるように」とタオルまで用意してくれていて、一同感激・・・。
集合場所は、民泊から15分くらい車で走ったビーチ沿いにありました。予約していたツアーのブースで名前を告げると、この日一緒に歩いてくれるガイドさんの名前を教えてくれます。だいたい25人くらいのグループが一緒に行動します。年齢は、とうまが最年少、上はかなりなおじいちゃんまで、様々。「必ずガイドの歩いた道の通りに歩くこと(外れると、砂地獄みたいなところがあったりして危険)」「急がなくていいから、自分のペースで歩くこと」「ごみが落ちているのを見つけたら、拾いながら歩くこと」などなど、説明があった後に、裸足になって、いよいよモンサンミッシェルへ向かいます。
モンサンミッシェルのある湾は、かなりの遠浅の海。引き潮のときは、ずいぶん遠くまで干潟が続いているように見えるのですが、満ち潮になるときは、ものすごい勢いで潮が高くなるんだそうで(走る馬と同じくらいの速さ、と昔からいうそうです)、昔、モンサンミッシェルへ巡礼に向かう人たちは、命がけで渡ったんだとか。
最初は砂の上を歩いていきましたが、だんだん粘土質の泥に・・・。
途中、川が海に流れ込んでいるところも通ります。大人は膝くらいまでですが、とうまはどっぷりお尻まで濡れました。しかも、流れがかなり強くて、とうまやさやが流されないか、ハラハラ。わたるときには、ガイドさんが先に川の真ん中くらいまで行って、渡れそうかどうか確かめてから、私たちが渡ります。みんなが対岸に行くまで、ガイドさんは川の真ん中でちゃんと見ていてくれました。写真は、川に入っていくところ。
途中、休憩がてら、潮の満ち引きの仕組みやモンサンミッシェルの歴史などを説明してくれて、約3時間で7キロ、湾を横切りました。
やっと着いた~!!
川で濡れてびしょ濡れだったうえに、風が冷たくなってきて、とうまがかなりかわいそうなことになってましたが、それにしてもよく歩いた!
ここでいったんグループは解散し、1時間半ほど自由時間。修道院までは見る時間がないので、散策することにしました。島の入り口に足を洗うための蛇口があったので、そこでまず足を洗い、いざ城壁の中に足を踏み入れると・・・人、人、人。まるで、ここは竹下通りでしょうか、という感じ(汗)。とにかく表通りから抜けようと、民泊のオーナーさんが教えてくれた通りに、入り口右手の階段を上って、城壁沿いに山の中腹まで登って、また降りてきました。
それにしても、島の中は、残念なくらいに観光地化されていて、修道院の厳かさは、林立するお土産屋さんやカフェに打ち消され、値段もどこもびっくりするほど高かったです・・・(コーラのボトル1本4ユーロとか 汗)。民泊のオーナーさんも、「ぜったいモンサンミッシェルでは食事したらだめよ!スーパーで買い出しして、ピクニックしたほうがいいわよ!」とかなり強い口調で言っていました(笑)。そして、神聖な雰囲気を味わいたいなら、朝早くか、夕方がおすすめだそう。特に、19時過ぎると、お店がすっかり閉まるので、夏場は特に夜の訪問がおすすめだと言っていました。
さてさて、島からは、トレッキング始めた地点まで、ツアー会社のバスが連れて帰ってくれます(ちなみに、往復歩きのコースもあり)。陸地側にあるツアー集合場所の駐車場までは、島から陸地まで橋が伸びていて、そこをシャトルバス(無料)が運行しています。本当は歩いて渡りたかったけれど、とうまのことを考えてバスで移動。そこから、ツアー会社のバスに乗り換えて、トレッキング開始場所まで約30分の道のり。とうまもさやも、くたびれきって、バスの中でひと眠り。家に戻って、急いでシャワーとご飯を済ませたら、あっという間に夢の世界に旅立っていきました・・・。
モンサンミッシェル、島の上は正直がっかりしてしまったのですが、そこへ至る道のりが本当に印象深くて、ぜひまた行ってみたいと思っています。中世の巡礼者にくらぶべくもないけれど、それでも自分の足を使って一歩一歩あゆみを進めているうちに、あの有名なモンサンミッシェルの優美なシルエットが少しづつ近づいてきて、本当に敬虔な気持ちになりました。最初は「つめたいな」「足が泥んこになっていやだな」などといろんなことを考えながら歩いていましたが、だんだん頭も空っぽになっていきました。体はくたびれたけど、心は満ち足りて、陳腐な言い方だけれど、一生の思い出になった一日だと思います。